年明け早々のアフリカ・ギリシャ訪問、そしてその後のダボス会議出席と、総理の正月は外交日程で、スタートした。特にアフリカ出張はサハラ以南へ日本の総理としては初めての訪問であり、アフリカ諸国からは大変な期待をもって迎えられた。欧米からは、日本の新たなグローバル外交のスタートと、注目をあびた。事実、N・Yタイムス、ヘラルド・トリビューン、CNNといったメディアは肯定的に報じた。

 ダボス会議への出席も総理の出席は初めてであり、日本の景気動向、財政政策に世界の関心が高いという事もあり、森総理のスピーチはダボス会議のハイライトであった。

 総理自身のこのスピーチにかける熱意は相当なものがあり、推稿を重ね、行きの飛行機の中でも最後まで筆を入れていた。その結果、辛口の会議出席者からも、「日本経済の立て直しと改革に対する総理の決意と自信が伝わりよかった。」「今まですでに日本が取組んで来た事やその結果についても分かり易く説明していた。」と、おおむね好評であった。

 であるにもかかわらずこうした会場の反応を正確に伝えた日本の報道は少なかった。たとえば1月28日の朝日新聞3面の記事は、「賢人」でなく「県人」というお寒いジョークで始まり以下の様に批判した。

  (1)首相は、用意した原稿の棒読みに終始。
  (2)ダボス会議の魅力のひとつである「ネットワークづくり」には、
     ほとんど関心が向かなかった、日本経済界主催夕食会をキャンセルし、
     チューリッヒのレストランで大使と食事をしていた。
  (3)その欠席した夕食会には鳩山氏らが首相の「代役」を演じて奮闘していた。
 

 (1)の棒読み批判であるが、棒読みとは「文章を抑揚や区切りをつけづに読むこと。」であるが、会場でそう感じた人はこの記者氏だけであろう。彼がこの言葉の意味を正確に知らずに使っているのかもしれない。

 (2)について言えば、総理はこの日日本で公務があった為チューリッヒに着いたのが五時すぎであり、チューリッヒからダボスへ行くとすると列車で3時間以上かかり、もちろんジャパンディナーには出席来きない。

 記事には、作為的にダボスとチューリッヒの距離にはふれておらず、まるでサボッて欠席した様な印象を与えている。

 ネットワーク作り、社交の観点で言えば、総理は次の日、WEF主催で総理の為にセットされたランチに出席している。ダボス会議のシュワブ事務総長はじめ会議関係者、ダボス滞在中の各国主脳ほぼすべて、そして主要経済人と素晴らしい顔ぶれがそろった。総理は出発ギリギリまでこうした人達と有意義な意見交換をした。しかしこのランチについて記事では意図的にふれていない。このランチはネットワーク作りではないのか、   これでは事実を報道するという記者の使命を初めから放棄していると言える。

 (3)に到ってはほとんど作り話の世界だ。(「あなたが総理だったら」と言う問に鳩山氏をはじめ何人かの人がジョークをまじえて答えた。)、そのどこが代役で奮闘なのか。

 せっかくダボスまで来たなら総理のスピーチに対する出席者の感想を聞くべきではないだろうか、英語が出来ないのであれば日本人出席者でもいいだろう。総理が大使とかわした、ほとんど雑談といえる会話をのせるより大事だという事は誰が考えてもわかる。

 この記事よりもっとひどかったのが1月30日テレビ朝日のニュースステーションだ。

 なんとテレビ局が社民党国会議員にビデオを持たせ、中の取材とレポートをさせている。ビデオ持込み不可の所でも撮影しようとして注意を受けるという恥ずかしい行為をくり返すのであるが、中身はゼロである。しかし問題は中立であるべき報道機関が、公共の電波を使い議員に代わりに取材させるとはどうしたことか。このビデオを見た後、久米氏のとなりの超ワンパターンと言われる解説者が、まったくの取材不足の為か、やはりWEF主催ランチの事を伝えずに、スピーチだけで帰ったと的はずれなコメントをした。ジャーナリストの基本から勉強し直す事をおすすめする。

 かつて沖縄のサンゴを自から傷つけていながらダイバーのせいにし自然保護を訴えた報道機関があった。

 両報道とも、総理は国益の為に仕事をしていないかのごとく報道している。こうした報道は実は世界の人にも伝わる。

 ほんとうに国益を損なわせているのは誰だ。

  

  

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                             2001年2月1日