〇二見委員長
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。


〇安倍(晋)委員
 自由民主党の安倍晋三であります。
 ただいま防衛庁長官から御説明のございました不審船追跡事案について何点か質問させていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 今回、この事案に対しまして、安全保障委員会としては安全保障委員協議会を緊急に開催したわけでありますが、これはテポドン発射のとき以来であります。しかし、今回はテポドン発射とは違いまして、二隻の不審船それ自体の領海侵犯ということであれば、それはこの緊急の会を招集するような事案ではないんだろうと思います。ただ、今回は、この緊急の協議会を開催したということは、自衛隊発足四十五年の中で初めて海上警備行
動が下令をされたということであります。そしてもう一点は、これも極めて大きな問題ではありますが、結果として、残念ながらこの二隻の不審船は取り逃がしてしまったということではないか、このように思うわけであります。
 今回、自衛隊のP3Cがこの不審船を発見以来、私は、まず海上保安庁そして運輸大臣も極めて俊敏な決断をされたんだろう、こういうふうに思います。大臣も、威嚇射撃を含めての行動を海上保安庁に命令していたわけでありますし、そしてまた、すぐ直ちに省庁間協議を行い、かつまた、最終的には運輸大臣の決断によって海上警備行動の要請を防衛庁長官にしたわけであります。そしてさらには、小渕総理大臣も、これは四十五年の歴史の中で初めての命令である海上警備行動の命令の決断をされた。私は、大変これはある意味では果断な決断をされたなと改めて敬意を表したい、こういうふうに思うわけであります。
 しかしながら、現在の法令の許す範囲内ですべて適切な処置をとったにもかかわらず、結果としてはこの二隻の不審船は追尾を逃れた、逃げてしまったという結果が残ったわけであります。
 その中で、何点か問題点を指摘させていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 今回初めて発動されました海上警備行動についてお伺いをさせていただきたいと思うわけでありますが、この海上警備行動の要請を運輸大臣が防衛庁長官にされてから発動に至るまでの経緯と、それに要した時間をお伺いしたいと思います。


○野呂田国務大臣
 私どもが運輸大臣から、海上自衛隊の方で協力していただきたいという要請を受けたのは、零時三十分でございました。そして、安全保障会議、持ち回り閣議等を消化しまして、二十分後、零時五十分に私どもが海上警備行動の発令をしたということでありまして、かなり迅速に処理されたのじゃないかと考えております。


○安倍(晋)委員
 極めて迅速であつた、こういうふうに思うわけであります。
 しかし、今もおっしゃった零時三十分から零時五十分までの二十分しかかからなかったというのは、これはあくまでも形式上のことであろうと私は思います。実際、海上警備行動の要請から命令の下令まで二十分しかかからないのであれば、昨年、潜水艦の事案に際しては閣議を飛ばすことにしたわけでありますから、それで迅速にしようということを決定したわけであります。しかし、もし二十分でできるのであれば、本来こうした処置も必要がなかったんだろうと思うわけでありますから、今、形式上は長官のおっしゃったとおりなんでしょうけれども、実態上はやはり、二十時台の後半に省庁間協議を運輸省が防衛庁に要請をした段階から、実はその段階から準備を始めていたんだろうと私は思います。ですから、本当はやはり四時間ぐらいかかったんではないか、こんなような認識を私自身は持っているわけであります。
 問題点の第一点でございますが、実際海上警備行動に至るまではあくまでも海上保安庁が対処しなければいけなかったという点も、やはりこれは我々も大きな問題点として認識をしておかなければいけないんであろうと思います。この不審船二隻は、私は、私自身の見解といたしましては、これはやはり北朝鮮の工作船であつたという可能性が限りなく高いんであろう、こういうふうに思うわけであります。そういう国のいわゆる工作船が断固たる決意で情報収集をして逃走を図ろうというときに、果たして海上保安庁で、海保で逮捕きるかどうかということについては、私は大きな問題点があつたんであろうと思います。
 そういう意味では、海上保安庁がずっと追跡をして、そして最終的に自衛隊が海上警備行動の発令があつて行動を起こすまでの時間、これはやはり大きな時間だったな、このように私は思わざるを得ないわけであります。
 そしてまたさらに、もしこの間、省庁間協議等が調っていて、自衛隊も一緒に追尾をしていたとするわけでありますが、海上保安庁と一緒に追尾をしていたんでしょうけれども、ここで武器使用について何点か質問させていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、もしそこで、海上警備行動が発令される前にこの不審船が何らかの形で海上保安庁の船を攻撃した場合、そばにいる自衛艦は、それを助けるためにその不審船を攻
撃できるかどうかということについてお伺いをしたいと思います。


○野呂田国務大臣
 海上警備行動が下令されていない場合においては、海上保安庁の艦船が攻撃を受けた場合、これを救助するための武器使用は、自衛隊法上許されていないところであります。海上警備行動が下令された場合に、停船させるために相手に着弾させることを目的とした武器の使用は、自衛隊法九十三条によって準用される警察官職務執行法七条の要件に該当する限り可能である、こういうふうに考えます。


○安倍(晋)委員
 今の御答弁の中に、我が国の安全保障上の問題点が含まれている、このように思うわけでありますが、海上警備行動の命令が下されない限り、自衛隊の艦船は、自衛隊法の九十五条の武器等の防護あるいは正当防衛にのっとってみずからを辛るために武器を使用するということでない限り、海上保安庁の船が攻撃をされているとしても、全く手出しができないということであります。ということは、そういう状態が何時も実は続いていたんだということではないか、このように思うわけであります。
 また、さらに問題点は、その後、海上警備行動が発令された後も、あくまでも警告射撃しか当然できなかつたわけでありますが、この警告の中には、相手の船をとめるために船体に攻撃を与えるということは自衛隊法の中からはできないのであろう、私はこういうふうに思うわけであります。
 もう一度確認をさせていただきたいと思うわけでありますが、警告は、あくまでもこれは海を撃つ警告であつて、その船体自体を撃つことはできないんだということを確認させていただきたいと思います。


○野呂田国務大臣
 御指摘のとおり、相手が攻撃した場合に私どもが反撃をすることは可能であつても、相手が攻撃に着手しない間にこつちが相手方の船に対して攻撃を加えることは許されないものだと考えております。


○安倍(晋)委員
 先ほど、まず第一点の問題点として、領域警備を与えていない自衛隊が、海上警備行動の発令までは、事実上なかなかそうした警備行動ができないという問題点も浮かび上がってきたわけでありますが、さらに、この発令後も、実は相手がこちらの法令上の不備を知っていれば、まんまと逃げおおすことができるんだろうということが証明をされてしまったんだろう、私はこういうふうに思うわけであります。
 先ほど長官が、御説明の中で、最後の段において、こうした状況では断固たる処置をとるということが抑止力となるという御発言がございました。確かに、海上警備行動を下令するんだという決意を示したわけでありますが、しかし、このサインを相手方がどういうふうにとるかということであります。
 これを、我が国がこういうときにはもう自衛隊も出すんだという決意を示したことによって、これは、もうこういうことをするのはやめておこうと思うか、自衛隊が出てきても、こちらから弾を撃たない限り大丈夫だよ、向こうがそういう認識を持つかということで、私は大きく異なつてくるんだろうと思うわけであります。
 私は、残念ながらこれは後者ではないかなという危惧を強く持つわけでありますし、また、今回の船も、恐らく我が国のこうした自衛隊の法令上の問題点を十分に熟知した上で、一切反撃をせずにどんどこ逃げていったんだろう、こういうふうに思うわけであります。
 韓国領内に侵入した不審船というのは反撃したり等々するわけでありますが、それは、反撃をしなければ沈められてしまうわけでありますから、そうした反撃をする。我が国領海に入ってきた場合は、これは沈められるということはなかなか起こり得ない、反撃しない限りまず起こらないということを知った上で、こうしたことを行ったんであろう、私はこういうふうに思うわけであります。ということは、これからもこういうことが起こつて結果は同じになつてしまうんではないか、そういう危惧を抱くわけであります。私は、その問題点は、むしろ行政府よりも我々立法府の責任ではないか、また、我々与党の一員として強く責任を痛感するわけであります。
 続きまして、最後に、この関連では、長官に、結果として逃げてしまったということに対して、これがやはり防衛庁の限界である、現在の法令上の中では限界であるということについての御認識というか見解をお伺いしたい、こういうふうに思います。


○野呂田国務大臣
 現行法の枠の中では、どのように領海を侵害されても、相手がこちらの停止等に耳をかさない限り、本日の行われた状態が限界の、貌実の姿ではないかと思います。


○安倍(晋)委員
 この結果を我々深刻に踏まえながら、自衛隊にやはり領域警備の任務を与える、さらには武器使用の点についても、もう一度法令の改正等も含めて考え直していかなければいけないのであろう、このように強く思うわけであります。
 続きまして、この船が自衛隊の追尾終了後どこに行ってしまったかという問題点でございますが、これは、その後も自衛隊も情報収集をしているんだろうと思いますが、この後行ったかもしれない国、あるいはロシアであるとか韓国、また北朝鮮でありますが、そういう国に対して情報収集の協力を恐らくお願いをしているんだろうと思います。
 また、在日米軍あるいは米国に対して、米国がとり得た情報等々についての情報をこちらに連絡をしてもらえるように、恐らく協力の要請をしているんだろうと思いますが、今わかり得ている範囲で結構でございますから教えていただきたい、
こういうように思います。


○野呂田国務大臣
 私どもは、今回の行動範囲というものを、我が国の防空識別圏の範囲内に限るということに方針を立てました。それを越えた場合は相手国を刺激したり不測の事態を引き起こしかねないという前提で、そういう方針を守ったわけでございます。
 したがって、防空識別圏を越えないように艦船は引き揚げさせましたが、飛行機につきましては、P3Cを使ってつい先ほどまで警戒監視をさせておりましたが、さっき、三時三十分でこの命令を解きましたので、今監視に当たつているという状態ではございません。現在は、これらの飛行機を使っても、レーダ」で探知できないぐらい遠距離に行ったということだけは確かでございます。
 では、どつちの方へ行ったかということになれば、なかなか、この防空識別圏の範囲内でやったものですから、行き先は確かではございませんが、探知できる限りにおいては、北朝鮮の方向に行ったというふうに私どもは考えております。


○安倍(晋)委員
 また、在日米軍、米国、またはロシア等からの情報について、町村副大臣にお伺いしたいと思います。


○町村政府委員
 外務省といたしましては、この事案が発生してから、アメリカ、ロシア、韓国、こうしたところに対しましていろいろな説明を行ってまいりましたし、また、ロシアに対しましてはしかるべき協力を求めたところでありまして、ロシア側は二十四日の午前、この船を追跡するために、既に警備艇を出しているというようなところまで来ております。中国に対しても、本日、昼間近くに事実関係の槻要を説明している。
 軍と軍との情報交換、これにつきましては、大変機微にわたりますし、詳細の説明というのはなかなかしづらいところがあるわけでありますが、いずれにいたしましても、現状、今どこまでその二隻の不審船が行っているかというと、今防衛庁長官お答えのとおり、方向としては北朝鮮の水域の方に向かつているということ以上の情報は、今のところは得ていないところでございます。


○安倍(晋)委員
 先ほど長官から、防空識別圏の範囲内から出た段階で追尾をあきらめたということでありますが、追尾を断念するに際しての決断の理由の一つが、防衛庁がE2Cを使って得た情報によって、北朝鮮からミグ21二機が発進をしたという情報を得たという情報を私とっているわけでありますが、その確認をさせていただきたいと思います。


○野呂田国務大臣
 本日七時五十五分ごろ、日本海上空において警戒匿視に当たつていたE2Cが、北朝鮮付近の空域を飛行する航空機を探知したことは事実でございます。
 この航空機の国待や、不審船との関連等については明らかではございませんが、かかる事実をもって、不審船の所属について確たることを申し上げることは困難だと思いますが、確かに、E2Cがこの空域を飛行する航空機を探知したことは事実でございます。


○安倍(晋)委員
 これは通告していない質問なんですが、ミグ21を作戦戦闘機として使用している国は、北朝鮮以外にはあるんでしょうか。


○柳澤政府委員
 今日では比較的古い世代に属する航空機になつておると思いますので、北朝鮮だけかと言われますとちょつとあれでございますが、北朝鮮にはミグ21が相当数あると思っております。


○安倍(晋)委員
 これは極めて歯切れが悪かつたと思うわけでありますが、ミグを使っている我が国周辺の国としては、ロシア、中国、北朝鮮ということになるんだろうと思いますが、ロシアの空軍はもう既にミグ21を事実上使っていないんだろうと思いますし、中国も既に世代が変わつておりますから、私は、その意味からも、今回の不審船と北朝鮮のかかわりというのは、北朝鮮の工作船であつたというふうに、かなり断定に近い認識を持ってもこれはしようがないんだろう、こういうふうに思うわけであります。
 続きまして、不審なこの二隻の船が、果たして日本近海でどういう活動を行っていたかということでありますが、わかつている範囲で教えていただきたいと思います。


○野呂田国務大臣
 先ほど申し上げたとおりでございますが、九時二十五分ごろ、能登半島の東方約二十五海里の領域内において、まず漁船二そうを発見したわけですが、第二十八信盛丸、第二大和丸を発見したわけであります。その時点においては、一見してさながら漁船のように見えるわけですが、全く漁具も積んでいないし、漁網もないし、漁をしている様子は全くない、こういう状況でございました。
 第二十八信盛丸につきましては、これは、接近して第二十八信盛丸ということを確認した結果、船籍の照会をしましたところ、日本船籍を持った船であるということは確認されました。第二大和丸につきましては、これは、確かにこの船の船籍はあるんですが、ほかにいることが確認されて、この不審船と思われる第二大和丸は、町らかに現存する日本の船の名前を詐称しているという事実が明らかになりました。
 それから、もう一つ、佐波島西方約十海里の領域内において発見された第一大西丸につきましては、接近して確かめた結果、このような名前を名乗っておりますが、この船につきましては、平成六年に既に廃船になりまして、現存する船ではございません。しかも、十分に使って廃船した船にんては、三十五ノットぐらいのスピードで走れるということがわかりますので、これもまた明らかに、日本のかつてあつた船の名前を使っている、
こういうことが明らかになりました。
 これらの船が何をやっていたかということにつきましては、ほとんど何もしていないという状況で、今申し上げた地帯で航行していたということでございます。何をしようとしていたかは、私どもは立入検査できなかつたわけですから、その意図はわかりません。


○安倍(晋)委員
 ただ、この船は縦長のアンテナ等を多数装備していたわけでありますが、そうしたアンテナ等を、外見から、どういった情報収集に使うか、もしわかっていれば、防衛庁の方でそういう認識があれば教えていただきたいと思うわけであります。


○野呂田国務大臣
 これは同時に、私どもがなぜこれらの二そうの船を不審船と判定したかということにもつながるわけでありますが、今申したとおり、漁船を装いながら漁具は一切持っていない、それから今委員から御指摘があつたように大変高度な情報を収集できるアンテナ等の設備を有しておった、それから国旗も標識も掲げていない。そういう意味ではかなり不審の要素に満ち満ちておりましたので、私どもはその結果に基づいて海上保安庁に連絡をした、こういう次第です。


○安倍(晋)委員

 また、今回のオペレーションにおいて、何隻かの自衛艦、あるいはP3C初めE2Cを含めて何機かの飛行機が参加をしていたんだろうと思うわけでありますが、こうした自衛艦あるいは飛行機につきましては、これは納税者の納税による多額の出費によって、我が国の安全保障のために四兆九千億円の防衛費を出費しているわけでありますが、そうした自衛隊の機能がどのように今回機能したのかということもやはりちゃんと情報公開をすることによって国民の安全保障に対する認識も高まってくるのだろう、私はこういうふうに思うわけであります。
 今回のオペレーションに出動した艦船あるいは航空機がどういうものであつたのか、またどういう活動をしたのかということをここで教えていただきたい.と思います。


○柳澤政府委員
 申し上げますと、まず護衛艦でございますが、護衛艦は 「はるな」、これはヘリコプターを三機搭載しておるタイプの護衛艦でございますが、これが先ほど大臣が申し上げた中の第一大西丸を追尾して、所要の警告射撃等を実施
いたしております。
 それから、護衛艦の、イージス艦でございますが、「みょうこう」 は、もう一つの方の第二大和丸に対応いたしまして、追尾をしております。
 そのほか、P3Cが、これは最大時で四機ないし五機であつたと思いますが、所要の警告を行ったり、あるいは周辺の捜索を行うということもやっておりましたし、先ほど先生がお触れになりました航空自衛隊のE2Cも空から警戒監視をしておるという状況で動いておったわけであります。


○安倍(晋)委員
 また、今回の活動には、当初の段階でイージス艦の 「みょうこう」 も参加をしているわけですね。ですから、そういう意味では我が自衛隊の最新鋭の航空機あるいは船舶が出動をしたんだろう、こういうふうに思います。
 また、冒頭私が申し上げましたように、運輸省の決断あるいは防衛庁の決断、そしてまた総理の決断も極めて迅速であり、間違いがなかったんだろう、私はこういうふうに思うわけであります。
 しかしながら、結果としては、この二隻の不審船が逃れてしまったということであります。特にイージス艦は千二百五十億もする船であります。そうした高価な船を多数動員してもこの漁船改良型の不審船が逃げおおせてしまったということは、やはり私ども深刻な反省をしなければいけないんだろうし、ここはやはり、幾ら自衛隊の皆さんに頑張ってくれと言ってもしようがない問題であります。また、幾ら予算を投下してもこれはしようがない問題であつて、こうした事案が発生して、次は確実にちやんとしっかりと臨検を行うことができるという態勢を組むためには、これはもう一度法律が今のままでいいのかということも検討をしていかなければいけないんだろうということを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。


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1999年04月12日